- 通信制高校の卒業が難しいと言われる理由
- 「卒業率」を公的データだけで比較できない理由
- 国が定める卒業要件と、日々のレポート・スクーリング・試験との関係
- 3年間で卒業するために本人と保護者ができる工夫
通信制高校を検討していると、「卒業は本当にできるのだろうか」という不安を感じる方も少なくないのではないでしょうか。
実際には、74単位以上の修得や通算3年以上の在籍など、国が定める卒業要件を満たせば卒業できます。それでも難しいと感じられやすいのは、自宅学習が中心になる分、レポートやスクーリングのペース管理を自分で行う必要があるためです。
卒業率という数値だけを見比べても、その学校で無理なく学び続けられるかどうかは分かりません。この記事では、卒業が難しいと言われる理由や国の卒業要件から、学校選びで確認したいポイント、3年間で卒業するための工夫まで解説します。
通信制高校の卒業が難しいと言われる3つの理由
通信制高校も、74単位以上の修得や通算3年以上の在籍など、国が定める卒業要件を満たす必要があります。
一方、各科目の単位を修得するための学習方法は、レポート・スクーリング・試験が中心です。それでも「卒業が難しい」と言われるのには、いくつかの共通した背景があります。
| 背景 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 自己管理の必要性 | 自宅学習を中心とするコースでは、全日制のように毎日共通の時間割で登校する形ではないことが多く、学習のペース配分を自分で管理する場面が多い |
| 単位認定の仕組み | レポート・スクーリング・試験は単位認定に関係しており、学校によっては必要なレポートが未提出だと試験を受けられない場合がある |
| 情報の比較しにくさ | 学校によってサポート体制が異なるほか、独自に示す卒業率は算出方法が統一されていないため、単純に比較しにくい |
こうした背景を知り、自分に合った学校の支援体制や学習管理の方法を確認しておくことで、卒業までの見通しを立てやすくなります。
通信制高校の卒業率は?公的データから分かること
学校を比べるとき、「卒業率」が高い学校を選びたいと考える方も多いのではないでしょうか。しかし通信制高校には、全国の学校を同じ条件で比較できる公的な「卒業率」の統計はありません。
理由は、生徒の入学時期や在籍年数がそろっていないことにあります。
令和5年度間の入学者のうち25.9%は年度途中の入学者で(転学者・転籍者を含む)、同じ年度の卒業者数と在籍者数を単純に比べても、入学者のうち何%が卒業できたのかは分かりません。
卒業率とは別に、通信制高校の学習・在籍状況を把握する参考になる公的データとして、次のようなものがあります。
| 指標 | 全体 | 公立 | 私立 | 出典年度 |
|---|---|---|---|---|
| 単位修得者割合(年度内に1科目以上修得) | 80.0% | 57.2% | 85.7% | 令和5年度間 |
| 年度途中入学者の割合(転学・転籍含む) | 25.9% | 11.7% | 28.2% | 令和5年度間 |
このほか、令和7年度入学者のうち中学3年時に不登校だった生徒の割合は57%です。
さらに、4年以上在籍する生徒の割合は、全体6.8%、公立25.6%、私立1.9%、株式会社立1.4%です(令和7年5月時点、令和4年度以降開校の73校を除く集計)。
株式会社立とは、構造改革特区制度に基づき、株式会社が設置・運営する通信制高校のことです。
「卒業率」として単純に比較できない理由
公立と私立では生徒の年齢構成や履修状況などが異なるため、この数値だけで学校の優劣を比較することはできません。
これらは卒業率を示すデータではありません。単位修得者割合は年度内に1科目以上を修得した割合であり、4年以上在籍している生徒がその後卒業したかどうかも、この調査だけでは分かりません。
数値は「卒業できるかどうか」の判定材料ではなく、学び方や在籍期間の幅の広さを示すものと捉えましょう。
法令上は卒業者数などの公表が求められていますが、学校が独自に示す「卒業率」には全国共通の算式が定められているわけではありません。対象年度・分母・サポート校の実績かどうかなど、算出条件を確認することが大切です。
卒業率の数値だけを見比べると誤解が生まれやすい部分です。対象となる生徒層や、休学・転校・卒業時期が延びた生徒の扱いも含めて、学校ごとの算出条件を確認する姿勢を持ちましょう。
【出典】
文部科学省「(別添資料2)高等学校教育の在り方ワーキンググループ審議まとめ 参考資料集」(単位修得者割合・年度途中入学者割合)
文部科学省「【資料1】通信制高校について」(4年以上在籍する生徒の割合)
文部科学省「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果(速報)」(不登校経験者の割合)
学校ごとの卒業実績を比較するときの注意点
学校が公表する卒業実績には差がありますが、その背景には、学習支援やスクーリングの運営方法だけでなく、生徒の状況や転入・編入者の割合、卒業率の算出方法の違いなどもあります。
数値だけで判断せず、次の点を確認しましょう。
学習サポート体制の違い
担任やコーディネーターとの面談頻度、レポート提出の進捗管理、質問対応の仕組みなどは学校ごとに差があります。
教員が進捗を確認する仕組みがあれば、提出の遅れに早い段階で気づきやすくなります。
スクーリングの実施方法と通学コースの違い
スクーリングは、定期的に行う学校や、一定期間にまとめて行う学校があります。
一方、週1〜5日などの「通学コース」は、スクーリングとは別の教育活動を含む場合があり、両者は同じものではありません。
学校選びでは、卒業要件に関わる面接指導の日程・会場と、日常的な通学コースの頻度を分けて確認しましょう。本人の生活リズムに合わない通学スタイルを選ぶと、必要な面接指導への参加を続けにくくなることがあります。
在籍する生徒の背景や状況の違い
通信制高校には、不登校経験者や転入・編入生など、さまざまな背景を持つ生徒が在籍しています。
必要な支援や卒業までの進み方は一人ひとり異なるため、学校の受け入れ方針や支援内容も確認しましょう。
通学スタイルの違いは、本人の生活リズムと合っているかが重要な確認ポイントです。週1日型か毎日型かを、見学時に本人と一緒に体感して選ぶと安心につながります。
通信制高校の卒業要件の基本
通信制高校を卒業するには、全日制と同じく「単位数」「在籍期間」「特別活動」という国の基準を満たす必要があります。
そのためには、日々「レポート提出」「スクーリング出席」「テスト」に取り組み、単位を積み上げていくことが欠かせません。どちらも理解しておくと、卒業までにどこでつまずきやすいかが見えてきます。
まずは、法令上の最低基準から確認しましょう。
① 卒業に必要な3つの条件
| 卒業要件 | 内容 | つまずきやすいポイント |
|---|---|---|
| 必要単位数 | 74単位以上の修得 | 科目選択のミスや履修計画の遅れ |
| 在籍期間 | 通算3年以上の在籍 | 転入・編入時の在学期間や修得単位の確認漏れ |
| 特別活動 | ホームルーム活動などの特別活動について、卒業までに30単位時間以上の指導を受け、学校の基準を満たす | 卒業要件として見落とされやすい |
学校によっては、これを上回る単位数や条件を定めている場合があります。
転入・編入時は、前籍校での在学期間や修得単位を踏まえて、受入校が在学すべき期間を定めます。退学後など高校に在籍していなかった期間は在学期間には含まれません。
こうした卒業要件を満たすには、日々の学習の積み重ねが欠かせません。
② 単位修得に必要なレポート・スクーリング・試験
| 取り組み | 内容 | つまずきやすいポイント |
|---|---|---|
| レポート提出 | 各科目ごとに定められた回数を期限内に提出 | 提出忘れ・先延ばしによる未提出の累積 |
| スクーリング出席 | 定められた時間数の面接指導への参加 | 体調不良や生活リズムの乱れによる欠席 |
| 単位認定試験 | 学校が定める評価基準に基づき、添削指導・面接指導等の学習成果とあわせて評価を受ける | 学校によってはレポート未提出により受験資格を失う場合がある |
レポートの提出が遅れがちになると、その科目の単位を修得できず、卒業時期に影響することがあります。
74単位などの卒業要件を満たせるかどうかは、日々のレポート・スクーリング・試験の積み重ね次第です。学校によっては、レポート未提出が試験の受験資格に影響するため、どこで止まりやすいか事前に把握しておくと備えやすくなります。
卒業までつまずきにくい学校の選び方|確認したいチェックポイント
学校によって、卒業までの支援体制には違いがあります。
学校選びの段階で、以下のポイントを資料や説明会で確認しておくと、入学後のミスマッチを減らせます。
学習面のサポート
レポート提出の進捗を教員が個別に把握・声かけする仕組みがあるか
スクーリングの通学頻度が本人の生活リズムに合っているか
欠席や未提出が続いた場合の面談・フォロー体制があるか
転入・編入生への学習フォローや個別カリキュラムがあるか
卒業実績・進路の透明性
卒業者数・退学者数・転学者数など、法令上公表が求められている情報を確認できるか
進路指導や進学・就職サポートの実績が公開されているか
特に「卒業率をどのように算出しているか」は学校によって定義が異なるため、説明会や個別相談で直接質問し、資料だけでは分からない部分を確認することをおすすめします。
卒業実績・進路の透明性は、掲載されている数字の多さよりも、質問したときにどこまで具体的に答えてくれるかで見るのがおすすめです。根拠を示して答えてくれる学校ほど、入学後の安心材料になります。
【出典】
文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」
e-Gov法令検索「学校教育法」
3年間で卒業するための具体的なコツ
3年間での卒業を目指す場合、入学後の過ごし方が大きく影響します。生徒本人と保護者、それぞれの立場でできる工夫を、テーマ別に整理しました。
| テーマ | 生徒本人ができること | 保護者ができるサポート |
|---|---|---|
| 提出物の管理 | 提出期限の1週間前を自分の締切にする | 提出物の進捗を月1回程度一緒に確認する |
| スクーリング・連絡 | 日程を年間予定表に早めに書き込む | 学校からの連絡(面談案内・欠席連絡)を見落とさない仕組みを作る |
| 相談・コミュニケーション | 分からない部分を溜め込まず、担任や教科担当に早めに質問する | 困りごとがあれば早めに担任へ相談する |
| 生活リズム | 学習時間を毎日決まった時間帯に固定する | 本人のペースを尊重し、進路や将来の話は焦らず少しずつ進める |
自宅学習が中心になる場合、人との交流が少ないと感じる生徒もいます。
交流機会を希望する場合は、行事やホームルーム、オンライン交流の実施状況も学校選びの確認ポイントになります。
学校によっては提出期限を前倒しにする方法もあります。本人だけに任せきりにせず、必要に応じて保護者と確認方法を決めておくと、提出の遅れに気づきやすくなります。
よくある質問
転入・編入した場合でも3年間で卒業できますか
転入・編入の時期や、前籍校で修得した単位の引き継ぎ状況によって異なります。
単位の認定状況次第では、在籍期間が3年を超える場合もあるため、転入・編入前に転入先の学校で単位の引き継ぎ可否を確認しておくことが大切です。
卒業率を学校に直接確認してもよいですか
資料請求や説明会、個別相談で、卒業者数や中途退学者数、卒業率の算出方法を確認して問題ありません。
数値を公表していない場合も、確認できる範囲を学校へ質問してみましょう。
必要な単位を修得できなかった場合、卒業時期は延びますか
必要な単位を修得できなかった場合、その科目を再履修するなどして、卒業時期が延びることがあります。
ただし、履修や再試験、再提出の扱いは学校によって異なります。単位を修得できなかった場合のフォローや再履修の方法を、入学前に確認しておきましょう。
まとめ|卒業要件と学校の支援体制を確認して3年間での卒業を目指そう
通信制高校も、国が定める卒業要件を満たすことで卒業できます。それでも「難しい」と言われるのは、自宅学習が中心となる分、レポートやスクーリングを自分のペースで管理する必要があるためです。
- 卒業が難しいと言われる理由:自己管理の必要性、単位認定の仕組み、学校間の比較しにくさという3つの背景があります
- 卒業率:全国の学校を同じ条件で比較できる公的な「卒業率」の統計はなく、単位修得者割合などの数値も卒業率そのものを示すものではありません
- 学校選び:学習面のサポート体制と、卒業実績・進路の透明性の両方を資料や説明会で確認しましょう
- 本人・保護者の工夫:提出物の管理やスクーリングの予定確認など、テーマ別に役割を分担すると続けやすくなります
卒業要件を満たすための日々の取り組みと、それを支える学校の仕組みの両方を確認することが、通信制高校で無理なく学び続け、卒業につなげる近道です。



