- 通信制高校卒業後の就職者割合の実態と、判断する際の注意点
- 就職・進学・アルバイト・職業訓練など卒業後の進路パターンの違い
- 学校の就職支援体制を比較するときに確認したいポイント
- 在学中から取り組める就職準備
通信制高校から就職を目指すとき、「全日制より不利になるのでは」という不安が浮かぶことがあります。結論から言うと、卒業者に占める就職者の割合だけを見て、有利・不利を判断することはできません。学校の支援体制や在学中の準備によって、状況は大きく変わります。
進路の実態を正しく理解したうえで、学校選びや準備の視点を押さえておけば、漠然とした不安を具体的な確認軸に置き換えられます。この記事では、卒業後の進路データから、学校の就職支援、在学中にできる準備まで解説します。
通信制高校からの就職は不利になる?就職率の実態
文部科学省「令和7年度学校基本調査」の卒業後の状況を見ると、通信制高校と全日制・定時制高校では、卒業後の進路に次のような違いがあります。
| 卒業後の状況 | 通信制高校 | 全日制・定時制高校 |
|---|---|---|
| 卒業者に占める就職者の割合 | 約14.1% | 約13.7% |
| 大学等進学率 | 約28.6% | 約62.6% |
| 専修学校専門課程進学率 | 約22.9% | 約14.8% |
| その他の進路・状況にあたる者の割合※1 | 約26.1% | 約4.7% |
卒業者に占める就職者の割合の差は約0.4ポイントですが、大学等進学率には約34ポイント、その他の進路・状況にあたる者の割合には約21ポイントの差があります。
ここで示した就職者の割合は、就職を希望した人のうち何人が就職できたかを示す「就職成功率」ではなく、卒業者全体を分母にした数字です。
「通信制だから不利」「差が小さいから不利ではない」と単純に判断せず、学校によって支援内容や実績は異なるため、「その学校がどのような支援をしているか」を見る視点が重要です。
学校ごとの実績を確認する視点
全国的な傾向をふまえたうえで、気になる学校が卒業生の進路をどう公表しているかも確認しておくと、より実態に近いイメージがつかめます。
卒業生の進路内訳(就職・進学・その他)を公開しているか
就職者数だけでなく就職先の職種傾向も示されているか
就職支援の利用者数や具体的な支援事例を確認できるか
これらの情報は学校の公式サイトやパンフレットに掲載されている場合があり、資料請求時にあわせて確認しておくと安心です。公開されていない場合は、説明会や個別相談で直接尋ねてみましょう。
学校ごとに卒業生の実績を紹介する際、集計対象の年度や卒業者数の範囲が異なる場合があります。数字を比較するときは、同じ条件で公表されているかも意識してみると、実態がつかみやすくなります。
【出典】
文部科学省「令和7年度学校基本調査」・高等学校(通信制)卒業後の状況調査・表297
文部科学省「令和7年度学校基本調査」・高等学校(全日制・定時制)卒業後の状況調査・表283
通信制高校卒業後の主な4つの進路パターン
通信制高校卒業後の進路には、就職、専門学校・大学への進学、アルバイトを経ての就職、職業能力開発校等の活用という主に4つのパターンがあります。
状況や希望に合った進路を考える際は、いくつかの選択肢を比較しながら検討することが大切です。
進路パターン比較表
| 進路パターン | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 就職 | 学校やハローワークの求人・就職支援を利用して就職活動を進める | 早めに社会人として働き始めたい場合 |
| 専門学校・大学への進学 | 資格取得やスキル習得を経て就職を目指す | 専門分野を学んでから就職したい場合 |
| アルバイト・パートを経て就職 | 働きながら生活リズムや社会経験を積む | じっくり社会経験を積みたい場合 |
| 職業能力開発校等の活用 | 1〜2年程度の職業訓練を受け、特定分野の技能や知識を身につける | 特定の職種に就きたい目標がある場合 |
どのパターンが良い・悪いというものではなく、通信制高校でも、状況や希望に応じて複数の進路を選べます。
学校説明会では、卒業生が実際にどの進路を選んだかを具体的に聞いてみるとイメージが湧きやすくなります。
1つの進路に決め切れない場合は、担任や進路担当の教員に、これまでの卒業生がどのように進路を決めていったかを聞いてみるのも参考になります。
学校の就職支援でチェックしたいポイント
通信制高校の就職支援の内容は学校によって異なります。就職を意識している場合は、資料請求や説明会の段階で支援内容を具体的に確認しておくと、入学後のミスマッチを防ぎやすくなります。
確認しておきたい支援内容
キャリアカウンセリングを個別に受けられるか
履歴書作成や面接練習のサポートがあるか
求人紹介や企業との連携実績があるか
資格取得やビジネスマナー講座など、就職準備に役立つ授業があるか
就職後のフォロー体制(定着支援)があるか
これらは学校のパンフレットだけでは分かりにくい部分もあるため、個別相談や説明会で「実際にどのようなサポートを受けられるのか」を具体的に質問してみることをおすすめします。
キャンパスによる違いにも注意
同じ学校法人でも、キャンパスによって提携している企業や就職支援の担当者体制が異なる場合があります。
通いたいキャンパスについて、そのキャンパス独自の就職支援情報が公式サイトなどに掲載されているかも確認しておくと安心です。
支援メニューが用意されていても、生徒本人が気軽に相談できる雰囲気かどうかは、見学や個別相談で実際に感じ取るしかない部分もあります。制度の有無だけでなく、相談のしやすさも確認しておくと、入学後に活用しやすくなります。
就職活動に向けて在学中からできる5つの準備
就職活動は卒業間際に慌てて始めるよりも、在学中から少しずつ準備を積み重ねる方が選択肢を広げやすくなります。
ここでは、通信制高校に通いながらできる代表的な準備を紹介します。
アルバイトなどで社会経験を積み、働くイメージを具体化する
興味のある分野の資格取得にチャレンジする
学校のキャリア相談やカウンセリングを定期的に利用する
全国高等学校統一応募用紙など、応募書類の書き方を早めに練習しておく
面接練習を学校のサポートや家庭内で繰り返し行う
アルバイトなどの経験を自己PRにつなげる
社会経験が少ないことに不安を感じる方もいますが、アルバイトや学校行事、ボランティアなどの経験も「どのように取り組んだか」を言語化できれば、面接での自己PRにつなげられます。
焦って完璧を目指す必要はなく、できることから少しずつ経験を積み、そこから学んだことを整理しておくと、面接や自己PRで説明しやすくなります。
応募書類の書き方は学校に相談する
学校経由の新規高卒就職では、原則として全国高等学校統一応募用紙を使用します。
アルバイトは職歴欄には記載しませんが、そこで得た経験は志望動機や自己PRの欄で説明できる場合があるため、記載方法は学校の進路担当者に相談してみましょう。
5つすべてを一度に始める必要はありません。まずは1つ、今の生活に取り入れやすいものから試し、慣れてきたら少しずつ増やしていく形で十分です。
【出典】
文部科学省「新規高等学校卒業者及び新規中学校卒業者の採用選考に係る応募書類」
通信制高校を選ぶときの比較ポイント(就職重視の場合)
就職を重視して通信制高校を選ぶ場合、学費やカリキュラムだけでなく、就職支援に関わる項目も比較対象に加えることが大切です。
就職支援の体制や求人とのつながりなど、パンフレットだけでは見えにくい項目を中心に、気になる学校同士を並べて比較してみましょう。
就職支援の比較チェック表
| 比較項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 就職支援の体制 | 専任スタッフの有無、個別面談の頻度 |
| 求人・企業とのつながり | 提携企業数や過去の就職先の傾向 |
| 資格取得サポート | 取得できる資格の種類と講座の充実度 |
| 実践的なカリキュラム | ビジネスマナー、パソコンスキルなどの授業有無 |
| 卒業生の進路実績 | 就職・進学・その他の内訳データの公開状況 |
比較の際は、複数校の資料を取り寄せて同じ項目で並べてみると違いが把握しやすくなります。
「提携企業数」は学校によって数え方が異なる場合があるため、企業数だけでなく、対象キャンパスで実際に紹介可能な求人や過去の就職実績も確認しましょう。
気になる学校が絞れてきたら、各校の公式サイトや資料で最新の情報を確認し、説明会や個別相談で直接質問するとより具体的なイメージを持てます。
数値やチェック項目だけでなく、実際にその支援を利用した卒業生がどんな経緯で就職先を決めたのか、具体的なエピソードを聞けると、資料だけでは見えない実態がつかみやすくなります。
就職支援を利用するうえで注意しておきたいこと
就職を目指すうえでは、良い面だけでなく注意すべき点も理解しておくと、入学後の不安を減らせます。
過度に心配する必要はありませんが、事前に知っておくことで対策を立てやすくなります。
| 注意点 | 対応のヒント |
|---|---|
| 就職支援の内容は学校・キャンパスによって差がある | 資料請求や個別相談で事前に確認する |
| 求人紹介はあっても、最終的な選考結果を保証するものではない | 学校の支援に加え、書類準備や面接対策も自分から取り組んでおく |
| 単位修得状況や卒業見込み、学校推薦の条件が就職活動に関係する場合がある | 卒業見込みや推薦条件、相談開始時期を早めに学校へ確認する |
| 就職相談や応募準備を始める時期は学校によって異なる | 高卒求人の全体日程と、校内での相談・推薦の流れを早めに確認する |
不安な点がある場合は、入学前の個別相談で率直に質問してみることをおすすめします。
実際の支援内容や過去の事例を具体的に聞くことで、漠然とした不安を減らしやすくなります。
卒業見込みが立たないと、内定が出ていても取り消しになる場合があります。単位の進み具合に不安があるときは、早めに担任や進路担当に相談し、見込みが立つ時期を一緒に確認しておくと安心です。
よくある質問
通信制高校卒業でも大企業への就職は可能ですか
学歴要件だけで採用の可否が決まるわけではなく、応募先の求人要件や本人のスキル・経験によって状況は異なります。
学校の就職支援を活用しながら、応募先の求める人物像に沿った準備を進めることが大切です。
アルバイト経験しかない場合、就職活動で不利になりますか
アルバイト経験は、仕事への取り組み方や、そこで学んだことを具体的に説明できれば、自己PRの材料にできる場合があります。
経験そのものだけでなく、担当した仕事、工夫したこと、身についたことを整理しておきましょう。
就職支援はいつ頃から利用できますか
学校によっては、低学年や入学後の早い段階からキャリア相談を利用できる場合があります。
対象学年や利用開始時期は学校によって異なるため、学校説明会や個別相談で確認しておくと安心です。この記事で挙げた以外にも気になる点があれば、説明会や個別相談で直接質問してみるのもひとつの方法です。
まとめ|通信制高校からの就職は学校の支援体制と在学中の準備で選択肢が変わる
通信制高校からの就職は、卒業者に占める就職者の割合だけで有利・不利を判断できるものではなく、学校ごとの支援体制や在学中の準備の積み重ね方によって選択肢の広がり方が変わります。
- 就職率:卒業者に占める就職者の割合の差は通信制と全日制・定時制で約0.4ポイントですが、これは就職成功率ではなく、進学率など進路全体を見る必要があります
- 進路の選び方:就職・進学・アルバイトを経ての就職・職業訓練など、進路パターンは複数あり、状況や希望に合わせて比較できます
- 学校選び:就職支援の体制はキャンパスも含めて学校ごとに差があるため、資料や個別相談での確認が欠かせません
- 在学中の準備:卒業間際に慌てるより、資格取得やキャリア相談を早めから積み重ねる方が選択肢を広げやすくなります
「通信制だから不利になるのでは」と決めつける前に、学校ごとの支援体制と自分の準備状況を照らし合わせてみることが、納得できる進路選びの近道になります。



