- 就学支援金の支給上限額など、学費で公立・私立が変わるポイント
- 公立・私立で異なる、通学コースの選択肢
- 担任制やスクールカウンセラーなど、学校によって異なるサポート体制
- 学力検査だけで決まらない、公立・私立の入試方法
「公立と私立の通信制高校はどう違うのだろう」と迷う方は少なくありません。公立通信制高校は授業料を抑えやすい傾向があり、私立通信制高校は通学の頻度や学び方を選べるコースを用意している学校が多く見られます。ただし、サポート体制は公立・私立という区分だけで決まるものではありません。
学費や通い方だけでなく、サポートの中身も学校によって差があるからこそ、比較する軸を先に整理しておくと、自分に合う学校を判断しやすくなります。この記事では、公立と私立の通信制高校を、学費・サポート体制・通い方の観点から解説します。
通信制高校とは?公立と私立の基本的な違い
通信制高校は、もともと働きながら学ぶ人に高校教育の機会を提供する制度として整備されました。
現在は生徒層も多様になり、公立・私立を問わず単位制を採用する学校が多く、レポート提出・スクーリング・試験などを通じて単位を修得していきます。
設置者の違いで見ると、公立通信制高校は都道府県や市町村などの地方公共団体が、私立通信制高校は学校法人が設置しています。このほか、構造改革特別区域制度に基づいて株式会社が設置する通信制高校もあります。
まずは、学費・通い方・サポート体制・募集区域の観点から、公立と私立の違いを一覧で確認しておきましょう。
| 項目 | 公立通信制高校 | 私立通信制高校 |
|---|---|---|
| 設置者 | 都道府県・市町村などの地方公共団体 | 学校法人 |
| 学費 | 比較的安い | 学校により幅がある |
| 通い方の選択肢 | 学校によって異なる(週1日程度の通学コースなど) | 週1〜5日、オンラインなど多様 |
| サポート体制 | 学校ごとに差があり、相談体制が整っている学校もある | 学校ごとに差があり、独自の個別サポートを設ける学校もある |
| 募集区域・出願資格 | 居住地・勤務地などの条件がある場合がある | 学校ごとに募集区域が定められている場合がある |
表にある学費・通い方・サポート体制は、学校やコースによって幅があるため、あくまで目安として捉えてください。
加えて、公立では居住地や勤務地などによって出願できる学校が限られる場合があり、私立も学校ごとに募集区域が定められていることがあるため、全国どこからでも入学できるとは限りません。
気になる学校がどのエリアの生徒を対象としているかは、事前に確認しておくと安心です。
公立か私立かを最初から決めつけず、設置者の違いが学費やサポートの傾向にどう表れているかを確認する視点として押さえておきましょう。
【出典】
文部科学省「通信制高等学校情報発信サイト」
文部科学省「通信制高校について」
学費は公立が抑えやすく、私立は学校差が大きい
学費は公立と私立を比較するうえで、差が出やすいポイントのひとつです。
公立通信制高校は、もともと授業料が1単位あたり数百円程度からと安く、就学支援金を利用できればさらに負担を抑えられます。
私立通信制高校は1単位あたりの授業料が数千円〜1万円台と学校差が大きく、就学支援金を利用しても、施設費やサポート費用を含めた総額は学校によって幅があります。
まずは、学校が独自に設定する入学金・授業料の目安を見てみましょう。
| 項目 | 公立通信制高校 | 私立通信制高校 |
|---|---|---|
| 入学金 | 自治体・学校によって異なる(低額に設定されている例がある) | 学校により幅がある |
| 授業料(1単位あたり) | 数百円程度から | 数千円〜1万円台 |
学費の実額に加えて、国の制度である就学支援金がどこまで支援してくれるかも確認しておくと、実際の負担額をイメージしやすくなります。
| 項目 | 公立通信制高校 | 私立通信制高校 |
|---|---|---|
| 就学支援金(支給上限) | 2026年度から所得制限撤廃。単位制の場合は1単位336円、定額制の場合は月520円が支給上限 | 2026年度から所得制限撤廃。単位制の場合は1単位13,668円、定額制の場合は年337,200円が支給上限 |
| 支給対象単位数 | 原則として年間30単位・通算74単位まで | 原則として年間30単位・通算74単位まで |
| その他費用・注意点 | 申請や在籍期間などの要件があり、支給には条件がある | 申請や在籍期間などの要件があり、支給には条件がある。授業料が支給上限を超える分や、施設費・コース費などは自己負担になる場合がある |
「経済的な負担をできるだけ減らしたい」という場合は、公立通信制高校が選択肢に入りやすいでしょう。ただし、私立でも通うペースやサポートの範囲によって費用感は変わるため、金額だけでなく内容とのバランスで比較することが大切です。
就学支援金は授業料に充てる制度で、施設費や教材費など授業料以外の費用は対象外です。学校ごとの年間総額を確認してみてください。
【出典】
文部科学省「高等学校等就学支援金制度に関するQ&A」
文部科学省「高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律等の施行について」
サポート体制・通い方は公立と私立でどう違う?
「自宅学習だけで続けられるか不安」「スクーリングの日数が自分に合うか心配」と感じることもあるでしょう。
こうした不安は、公立・私立それぞれの実際の通い方やサポート体制を具体的に知ることで、解消しやすくなります。
通学頻度・スクーリングの違い
公立通信制高校では、週1日程度の通学コースなどを設ける学校があり、通学頻度は学校によって異なります。私立通信制高校でも、学校によって通学頻度はさまざまです。
文部科学省の令和7年度実態調査でも、通学コースの開設状況には公立・私立で差があることが分かります。
| コース | 公立(開設校数) | 私立(開設校数) |
|---|---|---|
| 週5通学コース | 1校 | 82校 |
| 週1通学コース | 39校 | 82校 |
| 集中スクーリングを前提としたコース | 1校 | 98校 |
このように、私立では通学頻度に幅があることが分かります。ただし、日常的に通う回数と、単位修得に必要なスクーリングの日数は必ずしも同じではありません。
普段は週に数日キャンパスへ通うコースでも、スクーリングは別の日程・会場でまとめて行う学校もあるため、あわせて確認しておくと安心です。
学習面・生活面のサポート
私立通信制高校には、担任制のきめ細かなサポートや独自の学習支援など、学校ごとに特色のある体制を整えている学校があります。
一方、相談支援の体制について、文部科学省の調査では次のような違いも分かっています。
| 項目 | 公立 | 私立 |
|---|---|---|
| スクールカウンセラーに相談できる体制を整えている学校の割合(令和7年5月1日時点) | 98.8% | 79.7% |
このように、少なくともスクールカウンセラーに相談できる体制の整備率は、公立の方が高い結果でした。
サポート体制は公立・私立という区分だけでは判断できません。
通信制高校では公立・私立を問わず、自宅学習やレポート提出の進捗を自分で管理する力が必要になりますが、公立通信制高校でも先生への相談は可能で、支援の頻度や方法は学校によって異なります。
学校説明会に参加すると、実際の学習の進め方やサポートの雰囲気を具体的に確認できます。
通学コースの回数だけでなく、スクールカウンセラーなどの相談体制も学校によって差があります。気になる学校には、通いやすさと相談のしやすさの両方を、具体的に問い合わせてみましょう。
【出典】
文部科学省「高等学校通信教育の質の確保・向上のためのガイドライン(令和5年2月一部改訂)」
文部科学省「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果(速報版)について(概要)」
学力検査だけでなく面接や書類で選考する学校もある
通信制高校の入試には、書類審査・面接・作文・学力検査があり、どれを組み合わせるかは学校・コースによって異なります。学力検査を実施せず、面接や書類などで選考する学校もあります。
文部科学省の令和7年度実態調査でも、選考方法の実施状況には公立・私立で違いが見られます。
| 選考方法 | 公立(実施校数) | 私立(実施校数) |
|---|---|---|
| 学力検査 | 15校 | 72校 |
| 面接 | 67校 | 216校 |
| 小論文・作文 | 33校 | 114校 |
| 調査書等の書類 | 56校 | 163校 |
※調査対象は公立81校、私立227校です。株式会社立15校は別区分のため、この表には含まれません。
公立は居住地・勤務地などの応募資格や募集人数に制限がある場合があるため、出願前に募集要項を確認しておくことが大切です。
選考方法の組み合わせは学校によって異なるため、学力検査の有無だけで一喜一憂せず、面接や作文でどのような点を重視しているかも合わせて調べておくと、対策の方向性が見えやすくなります。
【出典】
文部科学省「通信制高校について」
転入学・編入学は時期や必要書類が学校によって異なる
すでに他の高校に在籍していた方が転入・編入を考える場合、公立・私立とも受け入れる学校がありますが、時期や必要書類、単位の引き継ぎ方法は学校によって異なります。
なお、高校間のケースでは、転入は高校に在籍したまま別の高校へ移ること、編入は退学した後など、第1学年当初以外の時期に高校へ入学することを指し、必要な手続きが異なります。公立では募集時期を限定している学校もあるため、余裕をもって準備を進めましょう。
出願前には、次の点を確認しておくとスムーズです。
- 転入・編入の受付時期
- 必要書類(在学証明書・単位修得証明書など、入学区分や学校によって異なる)
- 前籍校で修得した単位のうち、卒業に必要な単位として認定される範囲
これらは学校によって扱いが異なるため、気になる学校に早めに問い合わせておきましょう。
公立では、居住地・勤務地などの応募条件や募集人数の制限が設けられている場合があります。転入・編入を考える方は、時期や単位の引き継ぎ方法も含めて早めに募集要項を確認しましょう。
【出典】
文部科学省「単位制高等学校教育規程」(編入学・転学および前籍校で修得した単位の扱いについて)
卒業率は一律に比較できない理由
「卒業率がどのくらいか」を気にする方も多いですが、学校が公表する卒業率を見るときは、対象年度や分母、卒業までの年数、転退学者の扱いなど、算出条件を確認することが大切です。条件の異なる数値をそのまま比較すると、学校間の実態を正確に比べられないことがあります。
卒業率そのものではありませんが、文部科学省の調査には、公立・私立の学習・在籍状況を知る参考データもあります。
| 指標 | 全体 | 公立 | 私立 |
|---|---|---|---|
| 単位修得者割合(令和5年度間、年度内に1科目以上の単位を修得した生徒の割合) | 80.0% | 57.2% | 85.7% |
単位修得の状況とあわせて、実際にどのくらいの期間在籍しているかを示すデータもあります。
| 指標 | 全体 | 公立 | 私立 | 株式会社立 |
|---|---|---|---|---|
| 4年以上在籍する生徒の割合(令和7年5月1日時点) | 6.8% | 25.6% | 1.9% | 1.4% |
※単位修得者割合・4年以上在籍する生徒の割合とも卒業率そのものではないため、これらの数値だけで卒業のしやすさやサポートの手厚さを判断することはできません
目安の数値だけで判断せず、実際にどのようなサポートを受けながら卒業まで進むのか、学校ごとの取り組みを確認することをおすすめします。進学や就職の実績についても、学校の資料や説明会で具体的に聞いてみると、イメージがつかみやすくなります。
単位修得者割合や在籍年数のデータは卒業率そのものではなく、公立・私立の学習・在籍状況を知る参考データです。気になる学校には、どのくらいの生徒が着実に単位を積み上げているか、資料や個別相談で尋ねてみましょう。
【出典】
文部科学省「【資料1-4】高等学校教育の在り方ワーキンググループ審議まとめ 参考資料集」
文部科学省「【資料1】通信制高校について」
公立・私立、それぞれが向いている人の特徴
ここまでの内容をふまえ、どのような人が公立・私立それぞれに向いているのかを整理します。あくまで一つの目安として、参考にしてみてください。
| タイプ | 重視したい条件 | 合いやすい人の特徴 |
|---|---|---|
| 公立通信制高校 | 授業料を抑えたい/学校の登校日程が生活に合っている | 自分で学習計画を立てて進めたい人 |
| 私立通信制高校 | 通学頻度や学び方を選びたい/学校独自の支援を受けたい | 自分に合う通い方を選びたい人、友人関係や居場所づくりを重視したい人 |
どちらが良い・悪いということではなく、本人が「どんな学び方なら続けやすいか」を基準に考えることがポイントです。
もちろん、実際には「学費は抑えたいけれど、サポートも少し欲しい」というように、複数の希望を持つ方も多いはずです。その場合は、公立・私立にこだわらず、条件を絞って学校を比較してみることで、希望に近い学校が見つかることがあります。
表の「合いやすい人の特徴」は、あくまで一つの目安です。友人関係や居場所づくりを大事にしたいのか、自分のペースで進めたいのか、本人の希望を具体的に言葉にしてみると、公立・私立どちらが合うかを考える手がかりになります。
まとめ|公立と私立は比較の軸を持って選ぶことが大切
公立通信制高校と私立通信制高校は、学費・サポート体制・通い方・入学条件のどれもが異なりますが、その違いは公立・私立という設置者だけで一律に決まるものではなく、学校やコースによって幅があります。
特にサポート体制は、「私立が手厚い」と単純に決めつけられるものではなく、公立・私立それぞれに異なる強みがあります。
- 学費:就学支援金の支給上限を含め、年間でかかる総額を確認する
- サポート体制:相談体制や学習支援の内容を、公立・私立という区分だけでなく学校ごとに確認する
- 通い方:日常の通学コースの回数と、必須のスクーリング日数の両方が、生活リズムに合うか見る
- 入学条件:公立は居住地・勤務地の条件、私立は募集区域など、入学できる地域や募集時期を確認する
公立と私立のどちらが優れているかではなく、学費・サポート・通い方・入学条件という軸を自分の状況に当てはめて比べることが、自分に合う通信制高校を見つける近道になります。
まずは、この4つの軸のうち、自分にとって譲れない条件を1つ決めるところから始めてみてください。





