免責事項:この記事は2026年10月時点の税制・社会保険制度をもとに解説しています。制度改正で基準が見直される場合があるため、申請の際は国税庁や日本年金機構などの公式サイトで最新情報も確認してください。
- 通信制高校・サポート校が勤労学生控除の対象校になるかの見分け方
- 給与収入163万円・178万円・136万円が示す、それぞれの基準
- 社会保険の扶養と勤務先での加入が、税の扶養控除とは別に決まる仕組み
- アルバイトの掛け持ちや年の途中の退職で、確定申告が関わる場面
通信制高校に通いながらアルバイトをしている生徒や保護者にとって、勤労学生控除は気になる制度の一つです。通信制高校は学校教育法上の高等学校にあたり、所得要件などを満たせば通信制でも利用できます。
ただ、控除の対象になることと、実際に税金が変わることは別です。163万円という控除の目安は、所得税が生じ得る178万円超や、親の扶養控除の136万円とは基準が異なります。この記事では、対象条件から、住民税・親の扶養・社会保険との違い、手続きまで解説します。
勤労学生控除とは
勤労学生控除とは、働きながら学校に通う学生・生徒が一定の条件を満たした場合に受けられる所得控除です。
所得控除は、税金を計算するときに、課税の対象となる所得から一定の額を引く仕組みで、勤労学生控除で引けるのは、所得税の場合27万円です。
この27万円は、現金で給付されるものでも、税額そのものから引かれるものでもありません。引かれた分だけ課税の対象になる所得が小さくなり、その結果として税額が下がる場合がある仕組みです。
所得税の計算は、おおまかに次の流れで進みます。勤労学生控除は、2番目の段階で引かれます。
- 収入から給与所得控除を引いて、給与所得を出す
- 給与所得から基礎控除や勤労学生控除などを引いて、課税所得を出す
- 課税所得に税率をかけて、税額を出す
対象になるのは、働いて所得を得ていること、所得が一定額以下であること、対象となる学校の学生・生徒であることなど、複数の条件を満たす人です。
所得控除は、対象の条件を満たしていても自動では反映されず、年末調整や確定申告で自分から申告して初めて適用されます。税金の手続きに慣れていなくても、申告が必要な制度だと知っておくだけで、控除の受け忘れを防げます。
【出典】
国税庁「No.1175 勤労学生控除」
国税庁「No.1000 所得税のしくみ」
通信制高校生も勤労学生控除の対象になる
通信制高校は学校教育法上の「高等学校」にあたるため、全日制・定時制と同じように、勤労学生控除の対象となる学校に含まれます。
対象校かどうかは、通っている施設の名称ではなく、どの学校に在籍しているかで決まります。在籍の状況別に見ると、確認が必要なのはサポート校のみに通う場合です。
| 在籍の状況 | 対象校になるか | 確認すること |
|---|---|---|
| 全日制・定時制・通信制の高等学校に在籍 | 対象校になる | 所得などの別の要件を満たすか |
| 通信制高校に在籍し、サポート校にも通う | 在籍する通信制高校が対象校になる | 通信制高校としての在籍があるか |
| サポート校のみに通う | 設置形態や課程によって異なる | 在籍先の学校に確認する |
表のとおり、通信制高校に在籍していれば対象校の要件を満たしますが、所得金額など別の条件も必要です。
サポート校のみに通う場合に注意したい点
サポート校は法令上の学校種ではないため、対象校に該当するかは設置形態や課程によって異なります。サポート校にだけ通っている場合は、在籍先の学校に確認しておくと確実です。
学生証や時間割の名称に学校名が入っていても、どちらの在籍かは分かりにくいことがあります。通信制高校の学生証や在籍証明書が手元にあれば、それが対象校の確認の手がかりになります。迷うときは、在籍先の窓口で聞いておくと安心です。
【出典】
e-Gov法令検索「学校教育法」
国税庁「No.1175 勤労学生控除」
勤労学生控除の所得要件は、給与収入のみなら163万円以下
勤労学生控除を受けるには、学生・生徒であれば誰でも対象になるわけではなく、所得などの条件を満たす必要があります。
その年の12月31日時点で、2026年分の所得税では主に次の3つの条件をすべて満たすことが必要です。
- 給与所得など、働いて得た所得があること
- 合計所得金額(収入から給与所得控除などを引いた後の所得の合計)が89万円以下で、かつ勤労による所得以外の所得が10万円以下であること
- 学校教育法に規定する高等学校(通信制高校を含む)などの学生・生徒であること
合計所得金額89万円以下という要件は、アルバイトなどの給与収入だけの場合、給与収入に置き換えると163万円以下になります。給与収入から給与所得控除(最低74万円)を引いた金額が89万円になる収入が、163万円です。
「控除の対象になる基準」と「税負担が発生する基準」は別
勤労学生控除の目安は同じ163万円でも、税がかかり始める水準は所得税と住民税で異なります。2つの税を並べて比べます。
| 基準 | 所得税 | 住民税(2027年度分) |
|---|---|---|
| 勤労学生控除の所得要件(給与収入のみ) | 163万円以下 | 163万円以下 |
| 控除の額 | 27万円 | 26万円 |
| 課税が生じ得る水準(給与収入のみ) | 178万円超 | 18歳未満は209万円超。18歳以上は自治体で異なる |
所得税は、163万円以下なら控除を使わなくてもかからない
給与収入のみで他に所得がなければ、163万円以下の範囲は、勤労学生控除を使わなくても所得税がかかりません。
163万円を超えて控除の対象から外れても、178万円までは所得税がかからない計算です。178万円という水準は、2026年分の税制改正で、基礎控除と給与所得控除が引き上げられたことによるものです。
社会保険料控除など他の所得控除がある場合は、所得税がかかり始める収入額はさらに高くなることがあります。
住民税は、18歳未満と18歳以上で控除の関わり方が違う
住民税の非課税の基準は、2026年12月31日時点の年齢で分かれます。
| 年齢 | 非課税の目安(給与収入のみ) | 勤労学生控除との関わり |
|---|---|---|
| 18歳未満 | 209万円以下(合計所得金額135万円以下) | 163万円以下はすべて非課税の範囲に収まり、控除を使わなくても非課税 |
| 18歳以上 | 自治体によって異なる(例:千葉市は扶養親族がいない場合119万円以下) | 目安を超えると課税され、26万円の控除は所得割の課税所得から差し引かれる |
実際に税額が軽くなるかどうかは、収入額やほかの所得控除などによって異なります。
103万円といった以前から広く知られている金額は、2026年分では基準が変わっています。調べた金額が何年分の制度の数字なのかを確かめてから使うと、年収の見込みを立て違えにくくなります。
【出典】
国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」(令和8年4月)
財務省「令和8年度税制改正の大綱」
国税庁「No.1175 勤労学生控除」
千葉市「学生でアルバイトをしていますが、いくらまでの収入なら市民税・県民税(住民税)はかかりませんか。(令和9年度)」
千葉市「個人市民税所得割の税額の計算方法」
親の扶養控除・特定親族特別控除は、勤労学生控除と基準が異なる
アルバイト収入を考えるときは、生徒本人の勤労学生控除に加えて、親が受ける扶養控除・特定親族特別控除(親の税金を軽くする控除)への影響も、あわせて確認しましょう。
本人に所得税や住民税がかからなくても、親の控除は別の基準で決まります。基準の金額も対象になる年齢も制度ごとに異なるため、表で整理します。
| 制度 | 主に誰の税金に影響するか | 2026年分の目安 |
|---|---|---|
| 勤労学生控除 | 生徒本人 | 給与収入のみなら163万円以下 |
| 扶養控除 | 親など扶養している人 | 12月31日時点で16歳以上。給与収入のみなら136万円以下(生計を一にしているなどの要件も必要) |
| 特定親族特別控除 | 19歳以上23歳未満の子などを扶養している人 | 給与収入のみなら136万円超197万円以下。159万円以下は最高額の63万円で、159万円を超えると段階的に減る |
扶養控除は16歳以上、特定親族特別控除は19歳以上23歳未満と、対象になる年齢も異なります。社会保険の扶養は、これらとは別の基準で判定されます。
19歳以上23歳未満なら、136万円を超えても親の控除が残る
特定親族特別控除は、給与収入が扶養控除の目安である136万円を超えたあとも、親の控除が段階的に残る仕組みです。
一方、16歳から18歳の場合は対象外のため、136万円を超えると扶養控除の対象から外れます。生徒の年齢と収入の両方を確認しておきましょう。
【出典】
国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」(令和8年4月)
財務省「令和8年度税制改正の大綱」
社会保険の扶養と勤務先での加入は、税の扶養控除とは別の基準で決まる
社会保険の扶養・加入は、次の2つを確認する必要があります。
| 確認内容 | 判定基準 |
|---|---|
| 親の健康保険の扶養に入れるか | 年収130万円未満が原則(19歳以上23歳未満は150万円未満) |
| アルバイト先の社会保険に加入するか | 年収だけでなく、週の所定労働時間や勤務先の規模などによって決まる |
健康保険の扶養については、年収の金額以外にも次の点に注意が必要です。
- 年齢の判定時点:19歳以上23歳未満かどうかは、扶養認定日の属する年の12月31日時点で判定される
- 年収の考え方:確定した1年間の金額ではなく、原則として今後1年間の収入見込みで判定される
- 生計維持要件:年収基準を満たしていても、親によって主として生計を維持されていることなど、ほかの要件もある
通信制高校の生徒は、学生であることを理由に勤務先の社会保険の対象外になるわけではなく、労働条件によっては加入が必要になる場合があります。
短時間労働者(一般の従業員より所定労働時間が短い人)の加入では、学生は原則として対象外ですが、通信制課程や定時制課程に在籍する生徒は例外とされているためです。
加入の条件のうち、月額8.8万円以上という賃金要件は、2026年10月1日に撤廃されました。
収入が増えてくると、本人の控除より、保護者の扶養への影響のほうが気になる場面があります。年間の収入の見込みを保護者に早めに伝え、扶養の確認先は保護者の勤務先や加入している健康保険に聞くことが、行き違いを減らす手がかりになります。
【出典】
日本年金機構「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」
日本年金機構「短時間労働者の要件に『学生でないこと』がありますが、『学生』とはどのような者を指すのですか。通信制課程に在学する者は対象となりますか。」
日本年金機構「2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました」
年末調整で足りるか、確定申告が必要かの分かれ目
勤労学生控除は、アルバイト先の年末調整、または自分で行う確定申告のいずれかで申請します。
1か所のアルバイトで年末まで働いている場合は年末調整で済む一方、掛け持ちや年の途中の退職があると、確定申告が関わる場合があります。
年末調整で申請する場合
- 勤務先から配布される「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、勤労学生に該当する旨を記入する
- 学校教育法上の高等学校の場合、原則として在学証明書の添付は必要ありません。勤務先から在籍確認の書類を求められたときは、その指示に従い、発行方法は学校の窓口に確認する
- 提出期限は勤務先の指示に従う
2026年分は、2026年11月までの源泉徴収は従来の基準で行われ、新しい基準での精算は2026年12月の年末調整で行われます。
掛け持ちや年の途中の退職では、確定申告が関わる
次のような場合は、年末調整だけでは済まず、確定申告が関わります。
| 状況 | 確定申告との関わり |
|---|---|
| アルバイトを掛け持ちしている | 年末調整されていない給与の額などによって、確定申告が必要になることがある |
| 年の途中で退職し、年末調整を受けていない | 確定申告により、払い過ぎた所得税の還付を受けられることがある |
| 年末調整で勤労学生控除の記入を忘れた、または申告し忘れた | 確定申告で適用を受けられる |
申告の種類によって、提出できる時期も異なります。
| 申告の種類 | 提出できる時期 |
|---|---|
| 納税が必要な確定申告 | 原則、翌年2月16日から3月15日まで(2026年分は2027年2月16日から3月15日) |
| 還付を受けるための申告(還付申告) | 翌年1月1日から5年間提出できる |
掛け持ちをしている場合は、勤務先ごとの給与明細をまとめて保管しておくと、確定申告が必要かどうかの判断や記入がしやすくなります。年の途中で退職したときは、退職時に渡される源泉徴収票が、確定申告で使う大切な書類です。
【出典】
国税庁「No.1175 勤労学生控除」
国税庁「No.1000 所得税のしくみ」
国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」(令和8年4月)
申請前に確認しておきたいチェックリスト
勤労学生控除の申請では、本人の条件、親の扶養・社会保険との関係、手続きの3つに分けて見ていきます。年末調整や確定申告の前に、次の項目を順に確認してください。
本人が控除を受けられるか
給与収入のみの場合、2026年の給与収入の見込みが163万円以下か
勤労による所得以外の所得が10万円を超えていないか
在学中の通信制高校が学校教育法に基づく高等学校か(サポート校のみの場合は要確認)
親の扶養・社会保険の基準を確認したか
12月31日時点の年齢(16歳以上か、18歳未満か、19歳以上23歳未満か)を確認したか
親の扶養控除・特定親族特別控除に影響する年収ラインを、保護者と共有したか
アルバイト先の社会保険に加入する条件と、親の健康保険の扶養の基準を、別々に確認したか
年末調整・確定申告の手続きの準備はできているか
年末調整の書類に、勤労学生に該当する旨を記入したか
勤務先から提出を求められている書類がないか、確認したか
掛け持ちや年の途中の退職があり、確定申告が必要かどうかを確認したか
判断に迷う項目は、年末調整の書類を出す勤務先、所轄の税務署、在籍先の学校の窓口に確認できます。
チェックリストは、年が替わる前だけでなく、収入が変わったときにも見直せます。シフトが増えた月があれば、そこまでの給与の合計から年間の見込みを出し直しておくと、年末の手続きの前に、基準との距離が分かります。
まとめ|勤労学生控除の対象になることと、実際に税金が変わることは別に確認する
勤労学生控除は、通信制高校生も条件を満たせば使える制度です。確認する観点を、4つに整理します。
- 対象校:通信制高校は対象校に含まれます。サポート校のみに通っている場合は、在籍先に確認が必要です
- 本人の税金:給与収入のみの場合、控除の目安は163万円以下です。所得税は178万円超で課税が生じ得て、18歳未満の住民税は209万円以下で非課税になります
- 親の扶養と社会保険:親の扶養控除は136万円以下が目安で、19歳以上23歳未満は特定親族特別控除が段階的に残ります。健康保険の扶養と勤務先での加入は、税とは別の基準で決まります
- 手続き:年末調整で済む場合のほか、掛け持ちや年の途中の退職では、確定申告が関わります
勤労学生控除は、対象になることと、税金が実際に変わることとが別の問題です。163万円・136万円・178万円は、それぞれ控除の対象、親の扶養控除、所得税の課税という別の基準なので、金額だけで判断せず、何を決める数字なのかを分けて確認してみましょう。