- 社会人でも入学できる年齢条件と、中退後に入り直す場合の扱い
- 通信制高校を卒業するために必要な単位数と在籍期間
- 公立・私立・サポート校でかかる費用の違い
- 既卒か中退後の再入学かで変わる、利用できる支援制度
平日は仕事があり、決まった時間に通学するのは難しい。そんな社会人が高校卒業(高卒資格)を目指す方法の一つに、通信制高校があります。
登校日数や学習時間を生活に合わせて調整しやすい学校・コースがあり、「社会人コース」など働く人向けのコースを設けている学校もあります。ただし、受け入れ体制や学費、スクーリングの頻度は学校によって異なるため、比べて選ぶことが大切です。
学校ごとの違いを比べるには、まず卒業までの仕組みと費用の条件を押さえておく必要があります。この記事では、入学から卒業までの仕組みを出発点に、学び方の選択肢、学費や就学支援金、仕事と両立しやすい学校の選び方まで解説します。
社会人が通信制高校に入学する条件と、卒業に必要な単位・在籍期間
通信制高校は、毎日の通学を前提とせず、添削指導(レポート提出)・スクーリング(面接指導)・試験の3つを組み合わせて単位を修得する高校です。
入学資格は、学校教育法により中学校卒業(卒業見込みを含む)またはこれと同等以上の学力があると認められることが基本で、全国一律の上限年齢はありません。これに加えて、学校ごとに詳細な出願条件が定められています。
社会人になってから新入学・転入学・編入学できる通信制高校もあるため、入学時期や出願条件、前籍校の単位の扱いを軸に確認しておくと、学校を比べやすくなります。
| 確認軸 | 学校による違い | 社会人が確認したいこと |
|---|---|---|
| 入学時期 | 4月・10月など複数回の入学時期を設けている学校もある | 希望する時期に入学できるか、出願締切がいつか |
| 出願条件 | 年齢や社会人経験の有無にかかわらず出願できる学校もある | 新入学・転入学・編入学のどの区分にあたるか |
| 単位の引き継ぎ | 過去に修得した単位が認定される場合がある | 前籍校の成績・単位修得証明書で、どの範囲が認定されるか |
出願の区分によって、求められる書類や認定される範囲が変わる場合があります。
自分が新入学・転入学・編入学のどれにあたるのかを最初に整理しておくと、学校への問い合わせもスムーズになります。
卒業に必要な主な3つの要件
- 在籍期間:高校での通算在籍期間が3年以上(前籍校の在籍期間を含められる場合がある)
- 修得単位数:74単位以上
- 特別活動:ホームルーム活動などの特別活動で、30単位時間以上の指導を受け、その成果が認められること
これらは法令上の最低基準で、学校が独自にこれを上回る条件を定めている場合もあります。このほか、必履修科目の履修など、学校の教育課程に基づく要件もあります。
学校ごとの卒業条件は、個別相談や資料請求で事前に確認することをおすすめします。
高校の入学資格には全国一律の上限年齢はありませんが、単位の引き継ぎや在籍期間の扱い、学校ごとの出願条件は異なります。「自分の場合はどうか」を必ず個別に確認してから出願を検討しましょう。
【出典】
文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)』
文部科学省『高等学校入学資格 法令等』
文部科学省『単位制高等学校教育規程』
文部科学省『通信制高校に関する関係法令等(抜粋)』
文部科学省『高等学校入学資格について』
オンライン学習とスクーリングの組み合わせで変わる、働きながらの学び方
仕事と両立しやすいかどうかは、「社会人コース」という名前だけでは判断できません。
社会人コースは法令上の共通制度ではなく、学校が独自につけている名称で、日常の学習方法やスクーリングの実施形態は学校ごとに異なるためです。確認したいのは、この2つの軸です。
| 確認する軸 | 主な選択肢・特徴 | 仕事との両立で確認したいこと |
|---|---|---|
| 日常の学習方法 | オンラインで授業視聴やレポートに取り組める学校もある | 学習時間を自分で確保できるか |
| スクーリングの実施形態 | 夜間・土日・集中型など学校によって異なる | 日程・会場が勤務スケジュールに合うか |
夜間・土日・集中型、勤務に合わせて選びたいスクーリングの形
スクーリングの実施形態は、学校やコースによって異なります。代表的な形と、勤務との兼ね合いで確認したい点をまとめました。
| 実施形態の例 | 特徴 | 仕事との両立で確認したいこと |
|---|---|---|
| 平日夜間 | 仕事終わりの時間帯に実施する学校もある | 終業時間や通勤時間を考えて、開始時刻に間に合うか |
| 土日 | 平日に休みを取りにくい人向けに、土日に実施する学校もある | 休日出勤や仕事の予定と重ならないか、年間の実施日数 |
| 集中型 | 数日間まとめて実施する形で、宿泊を伴う場合もある | まとまった休みを取れるか、会場までの移動費や宿泊費 |
ここに挙げた形はあくまで例で、実施日数や会場は学校ごとに異なります。普段の通学頻度とは別に、必須のスクーリングが年間でどのくらいあるかを確認しておきましょう。
オンライン学習を活用しても、スクーリングの対面参加は必要
オンラインで学習を進められる学校でも、スクーリング(面接指導)は原則として対面で行われます。
インターネットなど多様なメディアを利用した学習により、面接指導の時間数の一部が減免される場合はありますが、対面での参加そのものが不要になるわけではありません。
オンライン学習の活用度や、スクーリングの頻度・実施方法によって生活への負担感は変わります。自分の勤務時間や休みの予定を横に置きながら、通える頻度かを具体的に照らし合わせてみてください。
【出典】
文部科学省『通信制高校とは?』
公立・私立通信制高校の学費とサポート校の費用の違い
通信制高校の学費は公立と私立で考え方が異なり、サポート校を併用する場合は、通信制高校とは別の費用が加わります。就学支援金の扱いも区分ごとに違うため、まず3つの区分を比べてみましょう。
| 区分 | 学費の考え方 | 国の就学支援金の扱い | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 公立通信制高校 | 入学金は無料〜数千円程度。授業料は履修する単位数に応じて決まる学校もあり、自治体・学校差が大きい | 要件を満たせば授業料が対象(支給限度額は公立・私立で異なる) | 費用を抑えやすいが、教科書代や学校徴収金が別途かかる場合がある。学校によってはスクーリング会場や時間帯の選択肢が限られることもある |
| 私立通信制高校 | 学校・コースにより学費の幅が大きい | 要件を満たせば授業料が対象(支給限度額は公立・私立で異なる) | コース設計やサポート体制が多様。社会人向けコースを設ける学校もある |
| サポート校(併用する場合) | 通信制高校の学費とは別に費用がかかる | 国の就学支援金の対象外 | サポート校だけでは高校卒業資格は取得できない |
公立は自治体の公式ページ、私立は各校の学費ページで、年度ごとの金額を確認できます。
私立通信制高校の授業料、公開例で見る金額感
私立では、1単位あたりの金額に履修する単位数をかけて授業料が決まる学校があり、年間に履修する単位数によって負担額が変わります。
金額感をつかむために、2026年10月時点の公式ページで確認できた2校の例を挙げます。金額はいずれも就学支援金の適用前のものです。全国の相場ではなく、年度によっても変わる点には注意してください。
| 学校 | 授業料の公開例 | 授業料以外の費用 |
|---|---|---|
| 四谷学院高等学校(2026年度) | 1単位15,000円。25単位で375,000円 | 入学金50,000円(初年度のみ)。施設設備費・教育充実費・システム利用料が年度ごとに別途。教科書代と、対象者のみの本校スクーリング参加費が別途かかり、合わせて7〜8万円が目安 |
| NHK学園高等学校 | 1単位12,000円。24〜26単位で288,000〜312,000円 | 公式ページに年度の記載なし |
この2校の例では、授業料は年間で20万円台後半から30万円台後半でした。授業料のほかに、入学金や施設設備費などが別にかかる学校もあります。最終的な学費は、年度ごとの募集要項や公式ページで確認しましょう。
サポート校の費用は通信制高校とは別で、就学支援金の対象外
サポート校自体は高校ではないため、サポート校に支払う費用は国の就学支援金の対象外です。
一方、あわせて在籍する通信制高校の授業料は、要件を満たせば就学支援金の対象になります。
費用は気になるところだと思います。公立は単位数に応じて授業料が決まる学校があり、私立は施設設備費やシステム利用料などが別に設定されていることがあります。授業料だけでなく、年間でかかる費用の内訳まで資料で見比べると、金額の見通しを立てやすくなります。
【出典】
四谷学院高等学校『学費』
NHK学園高等学校『学費』
東京都教育委員会『授業料・入学料』
文部科学省『高等学校等就学支援金制度に関するQ&A』
既卒か中退後の再入学かで変わる、就学支援金と学び直し支援の対象
就学支援金は授業料を支援する国の制度で、学費とは別の仕組みです。2026年度から所得制限が撤廃されましたが、受給には要件があります。
社会人の学び直しでは、高校をすでに卒業しているのか、中退して再入学するのかによって、使える支援が異なります。
| 状況 | 就学支援金 | 学び直し支援 |
|---|---|---|
| 高校等をすでに卒業・修了している | 原則対象外 | 中途退学後の再入学が対象のため、対象にならない |
| 高校を中退して、再入学する | 要件を満たせば対象(通信制は原則48か月まで) | 48か月を超える場合、通信制・定時制は最長24か月の追加支援を受けられる場合がある |
| 高校に在籍した経験がない | 要件を満たせば対象 | 中途退学後の再入学が対象のため、対象にならない |
就学支援金や学び直し支援には、それぞれ受給要件があります。自分がどの状況にあたるかを整理したうえで、学校や都道府県等の最新情報を確認しましょう。
就学支援金を受けるために確認したい4つの要件
受給できるかどうかは、次の4点を軸に確認できます。
すでに高校等を卒業・修了していないか(既卒の場合は原則対象外)
在籍期間などの要件を満たしているか(通信制課程の就学支援金は原則48か月まで)
日本国内に住所を有しているか
国籍・在留資格の要件を満たしているか
支給額は、公立・私立、定額制・単位制といった学校種・課程によって異なります。
支給額や要件の詳細は制度改定により変わる可能性があるため、出願前に最新情報を学校または自治体に確認してください。
中退後に再入学する場合の追加支援
高校を中途退学して再入学する場合、卒業までに就学支援金の支給期間を超えてしまうことがあります。
その場合に使える「学び直し支援」には、次のような特徴があります。
- 対象:高校を中途退学して、再び高校等で学び直す人
- 追加期間:就学支援金の支給期間のあと、卒業まで最長24か月(通信制・定時制)
- 実施主体:公立・私立高校等は都道府県(国立高校等は国)
- 対象要件の一つ:高校等に在学した期間が通算で36か月を超えていることなど
対象要件や申請方法の詳細は、都道府県等の案内で確認する必要があります。再入学を考えている場合は、在籍予定の学校や住んでいる都道府県の最新情報を確認してください。
追加支援の対象になるかどうかには、過去に高校等へ在学した期間が関わってきます。いつからいつまで在籍していたかを、手元の記録や前籍校への問い合わせで先に整理しておくと、窓口でも説明しやすくなります。
【出典】
文部科学省『高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律等の施行等について』
文部科学省『高等学校等就学支援金・新制度 事務処理要領(第1版)』
文部科学省『高等学校等就学支援金制度に関するQ&A』
文部科学省『高校等で学び直す者に対する修学支援』
学費だけで決めない、「続けやすさ」で選ぶ学校選びの視点
学費が同じくらいでも、スクーリングの日程が勤務と合わなかったり、繁忙期にレポートの期限を調整できなかったりすると、学び続けにくくなることがあります。
仕事との両立を前提に、学校へ確認したい6つのポイントを、質問の例とあわせて紹介します。
| 確認したいポイント | 具体的に聞きたいこと |
|---|---|
| スクーリングの頻度・時間帯 | 年間の必須登校日数、平日夜間や土日の設定があるか、都合が合わない日の振替ができるか |
| レポート・授業視聴の締め切りの柔軟性 | 繁忙期に期限を調整できるか、期限に遅れたときにどう対応してもらえるか |
| 社会人向け相談窓口・担任サポート | 仕事の都合に合わせた相談時間があるか、どんな連絡手段で相談できるか |
| 立地・キャンパスの通いやすさ | 勤務先や自宅からの所要時間、通うキャンパスが正式なスクーリング会場かどうか |
| 同じ立場の人の多さ・オンライン中心のコースの有無 | 年齢や立場の近い人が多い環境を望む場合に、在籍者の傾向を聞けるか、オンライン中心のコースがあるか |
| 卒業後の進路サポート | 就職・転職・進学を見据えて、どのような進路支援があるか |
資料請求では学費や募集要項、説明会ではスクーリング会場の様子、個別相談では自分の勤務状況に合わせた質問がしやすくなります。
働き方によって、特に確認したい項目は変わります。次の表で、自分の仕事に近い行から見てみてください。
| 働き方 | 特に確認したい点 |
|---|---|
| シフト制や不規則な勤務 | スクーリングの日程の選択肢、都合が合わない日の振替 |
| 繁忙期がある仕事 | レポートや授業視聴の期限の調整 |
| 出張や残業が多い仕事 | 自宅でオンライン学習をどこまで進められるか、相談できる時間帯 |
表にない働き方の場合は、勤務時間や繁忙期など、自分の仕事で動かしにくい予定に関わるポイントを、上の6つから選んで学校に質問してみましょう。
同じ質問を複数の学校に伝えて、答えの具体さを見比べるのも一つの方法です。期限の調整方法や相談できる時間帯まで説明してもらえるかは、続けやすさを判断する材料になります。
働きながら学習を続けるための、入学後の工夫
仕事と学業の両立は時間的な負担が生じやすく、自宅学習が中心のコースでは、学習時間の確保や進み具合の自己管理も欠かせません。
入学後に続けるための工夫を、場面ごとに紹介します。
| 場面 | 工夫の例 |
|---|---|
| 学習を始めるとき | レポートの提出期限、スクーリング、試験の日程をカレンダーにまとめ、1週間・1か月単位で見通しを立てる |
| 繁忙期の前 | 繁忙期が分かっている場合は、前もってレポートや授業視聴を進めておく。期限の調整や振替ができるかも、あらかじめ学校に聞いておく |
| 学習が滞りそうなとき | 滞る前の早い段階で、担任や相談窓口に連絡して、学習ペースを相談する |
卒業には通算在籍3年以上と74単位以上の修得などが必要で、入学しただけで卒業が決まるわけではありません。年間にどれだけ履修するかが、働きながら続けるうえでの計画の中心になります。
単位制の通信制高校では年間の履修単位数が毎年同じとは限らないため、仕事の忙しさに合わせて年ごとの履修単位数を決められるか、学校に確認しておきましょう。
仕事が立て込んで学習が後回しになるのは、自然なことです。遅れを一度に取り戻そうとせず、残りの課題を週ごとに小分けにして、学校に提出の見通しを伝えておくと安心です。
よくある質問
社会人でも転入・編入は可能ですか
一般に、現在の高校から別の高校へ移る場合を「転入」、高校を中途退学した人などが途中の学年・時期から高校に入る場合を「編入」と呼び、通信制高校ではどちらも受け付けている学校があります。
ただし、前籍校での修得単位数や在籍期間の扱いは学校ごとに異なります。詳細は出願前に個別相談で確認することをおすすめします。
仕事を続けながらでも卒業できますか
仕事を続けながら通信制高校を卒業する人もいます。
卒業には、原則として通算在籍3年以上、74単位以上の修得、特別活動30単位時間以上の指導とその成果が認められることが必要で、単位はレポート、スクーリング、試験を通じて修得します。
勤務に合わせてスクーリングや提出期限の計画を立てられるかが、続けやすさに関わります。
学費はどのくらい準備すればよいですか
授業料は、公立では履修する単位数に応じて決まる学校もあり、私立では2校の公開例で年間20万円台後半から30万円台後半でした(就学支援金の適用前)。
このほかに入学金や施設設備費、サポート校を併用する場合はその費用が別にかかります。就学支援金の要件を満たすかどうかでも負担額は変わるため、気になる学校の資料請求で、年間の総額を確認してください。
まとめ|社会人の高校卒業は、働き方に合う学び方と費用・支援の条件で学校を絞る
通信制高校は、スクーリングの形や費用の条件が学校ごとに違います。仕事との両立を前提に学校を比べるときの要点を、6つにまとめます。
- 入学区分と卒業要件:新入学・転入学・編入学で手続きが変わります。卒業には通算在籍3年以上、74単位以上の修得、特別活動の指導とその成果の認定が必要です
- スクーリング:オンライン学習を活用しても対面は必要です。夜間・土日・集中型など、実施形態は学校ごとに異なります
- 費用:授業料の決まり方は公立と私立で異なります。サポート校の費用は別にかかり、国の就学支援金の対象外です
- 就学支援金と学び直し支援:所得制限は2026年度に撤廃されました。既卒者は原則対象外で、中退後に再入学する場合は学び直し支援を受けられる場合があります
- 学校選び:日程の選択肢、期限の調整、相談窓口など、続けやすさにかかわる点を、具体的に質問して比べます
- 入学後の工夫:提出予定の見える化、繁忙期前の前倒し、滞りそうな時点での早めの相談を心がけます
社会人が通信制高校で高校卒業を目指すときは、スクーリングの形、費用、使える支援の3点が自分の働き方や状況に合うかを軸に、学校を比べていきましょう。
条件が見えてきたら、気になる学校の資料請求や個別相談で、日程と費用の内訳まで確かめておくと、入学後の負担をイメージしやすくなります。





